東京サージクリニック耳鼻咽喉科

味覚障害

 

  味覚は人間の生活にとって重要な感覚です。単に味を楽しみ食欲を享受させるだけでなく、食物中の有害物質や毒物を識別し、生命を維持する上でも積極的な働きをしています。したがって、味覚障害はquality of lifeの支障となり、早期診断および早期治療が必要なことはいうまでもありません。

向島百花園にて「ザクロ」の花

 味覚障害の原因

 

 味覚障害は様々な病気に伴って見られます。口腔内の炎症や変性疾患、ウイルス感染、重金属中毒、細胞分裂を阻害する薬剤、血液透析、口腔および咽頭の放射線治療、腫瘍、味神経の断裂、口腔内乾燥症、味蕾での細菌集蔟などが味覚障害の原因として知られています。

 

  味覚障害の局在部位は、味蕾での味物質の接触を障害するもの(伝導性)、味細胞の障害の認められるもの(感覚性)、求心性神経の神経経路での障害のあるものに(神経性)に分けられます。伝導性障害は口腔内乾燥症、重金属中毒、味蕾での細菌集蔟などによって生じます。感覚性障害は放射線治療、ウイルス感染、炎症や変性疾患、薬剤、腫瘍、外傷などでみられます。神経性障害は主として腫瘍、外傷、医原性などでみられます。

 

  味覚障害の領域別分類では、末梢神経障害、半側全味覚障害、両側全味覚障害、解離性味覚障害および異常味覚に分類します。  味覚障害患者の原因別疾患頻度では、若年者ではウイルス感染後での味覚障害がみられ、中年になるとそれに心的要因の加わったものや歯牙関連疾患の関与するものが見られます。老年者では放射線治療後、降圧剤や抗うつ剤投与による副作用、義歯の影響、口腔内乾燥症などによる味覚障害が観察されます。一方、味覚障害の原因の多くは薬物性や亜鉛欠乏性であるとの指摘があります。

 

  

 

生体微量元素

 

生体内の微量元素は大部分が金属酵素あるいは金属蛋白として存在し、生体の代謝に不可欠なものである。亜鉛は約200種以上の金属酵素に関与し、成長、生殖機能、免疫機能、皮膚代謝、味覚、嗅覚の維持などの生理的役割を担っています。味覚器官における亜鉛の局在は、舌全体、特に糸状乳頭基底部および有郭乳頭の味蕾を含めた上皮全体にみられます。さらに亜鉛関連の金属酵素が味蕾には豊富に存在しており微細形態学的にも亜鉛欠乏により多くの異常所見が見られます。また、味蕾細胞は約10日で新生、再生すなわちturn overを繰り返し味覚受容器の機能を保持していますが、亜鉛欠乏によりturn over timeは顕著に延長し、味覚障害が発症すると言われています。栄養不足や薬剤による潜在性の亜鉛欠乏状態が味覚受容器の形態学的変化やその再生過程の遅滞を引き起こし、それに感冒罹患、薬剤のキレート作用や心因性の要因などの条件が加わることにより味覚障害を引き起こす可能性があります。

 

加齢と味覚機能

 

 味覚の感受性は16-20歳頃までに上昇し、以後感受性は低下します味覚の加齢による減退は、検知閾値や認知閾値による検討で、アミノ酸や人口甘味物質と同様に、基本的な甘味、塩味、酸味、苦味で報告されています。加えて電気刺激に対する舌感受性での加齢変化も報告されています。しかし、加齢による味覚機能の消失は嗅覚機能に比べて少ないとされています。老年者が若年者とくらべて食塩に対する反応が低下していることがわかっています。塩味と同様に苦味や酸味に対しても高齢者層で閾値の上昇が観察されています。